〜番外篇 アンジーとバタートースト 〜





二十年以上もたった今、アースシェイカーのシャラの裏話の中の言葉が凄く引っ掛かりました。
シャラ曰く、「ポッキーのバタートーストはマジヤバだし……」 何だろう?
ポッキーというのはシェラザード時代のアンジーのニックネームだし、……アンジーとバタートースト?……
十日程そんなジレンマを抱えていましたが、日経新聞に掲載されていた「ムンクの叫び」の絵を見て思い出しました。
ごめんね〜!! アンジー!!
といっても本人はもう覚えていないか?
今回は番外編でバハマキャラではなく藤田が再現します。( )内は心の内。

ちょうどノヴェラがネクサスレーベルでデビューした頃の話です。彼等は四ツ橋のLMスタジオで練習していましたので、バハマにはよく帰りに寄って休憩していました。
特にアンジーは毎回と言っていい程のぞいていってくれて世間話や色んな相談事も快く聞いていてくれたのです。
礼儀正しく言葉遣いも美しく人の悪口は言わないし、やさしいし小奇麗だし、絵に描いたような紳士!
その頃カウンターにいたのはアースシェーカーのシャラ。

FUJITA: ほんとにアンジーって礼儀正しいねえ。

SHARA: ほんまやねー。家であれはないけどねー
FUJITA: おはようございます、練習があるので失礼します、ってか(笑)
SHARA: (笑) おかん、行ってくるわ〜、てゆうてたり

FUJITA: (笑) 見たいねー、ほんまの姿っていうか、素のアンジー! ピュク(しっぽが伸びる音)
SHARA: お酒飲んで酔っぱらったら見れるかも  ピュク
FUJITA: あ、私誕生日近いし、それをネタに飲ましてみるか? ピュクピュク
SHARA: 普段ぜったい飲めへんけど、それやったら飲むかも ピュクピュクピュク
FUJITA: シャラ、黒いシッポが生えて、先がとんがってるよ。
SHARA: おねーさんこそ、バイキンクンみたいやで

そんなところへアンジー登場。

ANGIE : おはようございます。何だか雨が降りそうですよ。あ、シャラ君おはよう。

SHARA: おはにょう、コーラでいいっすか? (ニコニコ)しっぽパタパタ
FUJITA: あ、アンジー。私、もうすぐ誕生日。アンジーお酒飲めへんの知ってるけど、一度くらい飲もうよ。私も飲まれへんけど、飲んで欲しいのよねー(ほとんど強引に押し付ける。)パタパタ
ANGIE : わかりました。でも今日は体調を整えていないので明日、出直してきます。いいですか?
SHARA: ほんとに? 全然OKね(やったぁ) パタパタ
FUJITA: ねー。(ニコニコ。やったね。)パタパタパタパタ

こうして悪魔の子二匹は、しっぽを振り振り次の日を迎えた。

ANGIE : おはようございます。
FUJITA: おはようございます (ニコニコ 来た!)
SHARA: おはようございます (ニコニコ 来た来た!)
FUJITA: 今日は飲めるのね? 何がいいかな? パタパタ
SHARA: 水割り?コークハイ? パタパタパタ
ANGIE : じゃあ、コークハイで。
SHARA: ハイホー。おねーさんは、オレンジジュース? (ニコ…ニヤ) ブゥンブゥン
FUJITA: うっそー、今日は本当に飲めるんや〜(ニコニコ) パタパタ
ANGIE : はい、体調を整えてきましたから。
SHARA: ハイホー、コークハイ……とオレンジジュースある。 体調? (体操とか? 睡眠とか?)ブンブンブン
FUJITA: どんなあ?(ええ方法あるんやったらようく聞いとこ) パタパタ
ANGIE : はい、バタートーストです。
SHARA: へ、へえ……(なんじゃそら) パタ……パ…タ
FUJITA: バタートースト……? (パックでもするのか?) パータ……。
ANGIE : はい、バタートーストを食べるとトーストに塗ったバターが溶け出して、胃壁に…ゴクリ
SHARA: ……。(なんやあ? 化学反応が起こるのかぁ?)
FUJITA: ……。(ふえ?)
ANGIE : ……胃壁にじわじわとバターがくっついて、アルコールを飲んでもアルコールは吸収されずに…ゴクリ……それで酔わないんです。ゴクリ。
SHARA: ……。(そんなもんで効くんかあ?)
FUJITA: ……。(レーズンバターとか天ぷらの方が……でも、バタートースト?)
ANGIE : ちょっと失礼します。
FUJITA: ねえ、ねえ、アンジーがトイレへ行ってる間に聞くけど、酔い止めにはバタートーストなん?(ほんまに効くんかなぁ?)
SHARA: いやぁー? どうやろ? 効くんかなあ?(今から解るわ)

………三十分経過………

FUJITA: ちょっとアンジー、まだ帰ってこないけど、気がつかない間に帰ったぁ?(遅いゾ、遅すぎる)

SHARA: いやぁ? ここ通らな店出られへんやん(どうしたんやぁ?)

………四十五分経過……

FUJITA: ちょっと様子見てくるね(何をしてるのやろ)

 走って帰ってくる藤田。このころは現ステージ横に化粧室があったのだ。

FUJITA: シャラ、シャラ、アンジー酔ってるみたい。(ウッソー)
SHARA: うそやろー。まだ半分も飲んでないやん(シャレならんゾ)
FUJITA: あっ、ほんとだ。氷が溶けて、コップの上までコークハイ増えてる。そやけど「うっ」とか「アンジー大丈夫?」って声をかけたら「バタートーストが……」って言ってたよ(ニヤリ)
SHARA: きけへんねん、バタートースト……。(ニヤリ)
FUJITA: さあ、アンジーは虎になるのか泣き上戸か(ウフッ、アンジーの素顔♪)

SHARA: 急にガラ悪くなったりして……とりあえずお水用意しておいてあげよ。(暴れたら困るし……)

…… 一時間半経過……

FUJITA: ちょっと、大丈夫かなあ?(女子トイレを占拠されたら個人的に困るなあ)
SHARA: 大丈夫か見てくるわ。(おかしい、おかしすぎるゾ)

SHARA: 声かけても返事無いわ。鍵かかってるから戸あけられへんし、でも居てるってことやから……(変だ、どうなっているのだ)


……二時間経過……。

FUJITA: おかしすぎるよねえ。静かやし……。 ねえ、シャラ、急性アルコール中毒って聞いたことある?(こ、困ったゾ)
SHARA: もういっぺん、様子みにいこ。(まずいゾ、まずすぎる)
     アンジー! アンジー!!

FUJITA: 急性アルコール中毒って死んだりする?

バンッバンッ! ドアを手で叩きながら

SHARA:アンジー!! アンジー!!!(やばいゾ! メチャヤバ!!)
FUJITA: シャラ、そんなことになってたら私ら飲めない人に飲ましたから、業務上過失致死かぁ?(涙声)

ゴン!ゴン! ドアを足で蹴りながら

SHARA: アンジー!!! アンジー!!!! (ダメある ダメある)
      アンジー!!!!! (半泣き)


ANGIE : は……い  (ユラリ)

FUJITA: ああ、良かった、大丈夫?(良かった、殺人者にならんで。もうコリゴリだ無理強いするのは……)
SHARA: ふえー……。よかった、心配したぁ……。(マジッスよ……バタートーストはきかんねん)
ANGIE : あー……は、い……。
FUJITA: 取りあえず座って。(何で三人とも顔色真っ青やねん)
SHARA: ほんまにお酒弱そうやねえ(バタートーストはきかんねん!)
FUJITA: 私より弱いかも。私もかなり弱いけど(二度とバタートーストは聞きたくない、今度聞いたらムンクになるゾ)
ANGIE : ……は……い……バタートーストが、胃の…
     うっ

FUJITA: うっ  (きゃ〜〜ああぁ〜〜)
SHARA: うっ  (きかんねん、きかんねん、きかんねん)
ANGIE : 今日……は、これで……失礼します……(ゆらり)
FUJITA: お、おつかれさま〜……(バタートーストの後は何を言いたかったのか……? どうでもいい、私は一生食わん。)
SHARA: おつかれさま〜 (アンジー恐るベシ 恐るベシある)
FUJITA: シャラ、今日のことは全部忘れよう。(まいったー。)
SHARA: うん、忘れる。(絶対忘れられへんやん……取りあえず気分を変え……そういえば……)
     ところでねーさん、お酒飲めるやん。(ニコニコ)
     オレンジジュースの中にウォッカ入れといてんけど全然平気やん!

FUJITA: ………。
     (おにょれ〜、一石二鳥か〜。こんなに気を揉んで酔えるかぁ? 飲めたって嬉しくないわい! リベンジしちゃる〜〜!!)


FUJITA: シャラ、次、誰つぶそー? (ニヤ……シャラもまた潰しちゃる……) ピュク
SHARA: そうやねえ……(ニコ あ、また何か良からぬことを……) ピュク

 懲りない、懲りない二人でした。
 被害者のミュージシャンの皆さま、あらためておわびを……。







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