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みんなで滑れば怖くない?!



 冬来たりなば春遠からじという格言がありますが、やはり、季節ごとに変化のある日本に住めて、ラッキーと思うことも多く、何と言っても冬はですね、寒いですよ。  寒いとは言っても、楽しいことは山ほど。山なんですよ。
 冬山といえばスキー、これ、当たり前っすよね。
 以前、体を壊すまでは、随分とスキーにはまっていたことがあって、あちこち、バンドの子達にはナイショで、隠れスキーをやっていたことがありまして、ゼロイズムをやっていたころだったので、五バンドの追跡を逃れて、冬山に辿り着いたときはヤッター!これだと二重の意味でガッツポーズをしたものです。
 それもGARGOYLEのKIBAに見つかって、ゲレンデ中に電話呼出しをかけられた時(仕事ほったらかして逃げてました)もろくも崩れ去り、そこで藤田は考えた。ひとりで逃げるから追いかけられるのだ。ならば(そこに仕事をという気持はない。)スキーにはまる奴をふやせば良い!
 皆で逃げれば怖くない。(誰かが迷惑するという気持もない)さっそくGARGOYLEに声をかけた。
「お姉さん、何言ってるんですか? レコード発売のプロモーション中じゃないですか!!
 めげない藤田はアインスフィアに声をかけた。
「あー………、ツアーが………」 そう、誰がブッキングをしているのか忘れてしまっていた。私だ
 それでもめげない藤田は次々と声をかけた。さくLAさく。たかちゃんが「やったことないけど、行きたいですぅ」いい娘だ。ゲット。WITHは、酒ならいつでもOKだろうが、……スポーツは無理だ。
 残るはバレンタインD.C.だ。
 ミーティングにかこつけて「次のミーティングは、スキー場でするから、スキー用具持ってる人は持ってきて!集合はバハマ、PM10:00ネ!」
 さりげなく告げてスタジオを後にする藤田。
 やった!!堂々とスキーに行ける!
 プロモーション中のバンドもツアー中のバンドも頑張ってねーとばかり、一泊二日のスキー旅行だ。
 ヴィシャスの寺田君も参加した。移動中しっかりミーティングすると、(何の……)滑れるのは寺田君と、ジュンが少しだけという。土本は「あんまりやりたいと思わない……」とブツブツ言っている。何で?スキー場に来たらスキーかスノボーでしょう?!
 で、バレンタインD.C.というバンドは、ルックスと、性格が少し違っている。

 VO.の土本はワイルドに見えるが、あれこれ考えて動く理論派タイプだ。

 B.のジュンは、可愛くて女っぽいかと思うと、一番男らしい。

 G.のナオは、綺麗だけど、実は大ざっぱでワイルドだ。

 DR.のタケは、目つきが悪いけど、人付き合いが良くてよく笑う。

 こんな見かけと違う金髪長毛のメンバーもスキー板を付ければただのスキーヤー。
 おお、あのへっぴり腰は、金糸猿か(ヒド……)?と驚きの心とは裏腹に、至極、真面目に、神妙に………一番広くてゆるやかな処で、エッヂを使った止まり方や、体重移動でのターンとかの勉強会はした。皆、運動神経が良かったおかげか、教える側のストックしばきのおかげか、半日で林間コースを自由に滑れるようになった。みんな嬉々として楽しんでいる。文句を言っていた土本が、「これは自分で自分をコントロールできるのと達成感を持てるのが良いんですね」と言った……。
 すなおに「おもしろい!」って言えばいいのに。くすっ。(笑)
 粉雪が吹きつける。感覚のなくなった頬、辺り一面の白、私は風になる。聞こえるのは私の板の音、風の音、ターンするたびに雪を飛ばす。ああ、生きている。
 上床の笑い声が聞こえる。「やめー! やめって!!」なお君が文句を言っている「なーにやってんの〜」アクセントの変なのはジュンだ。タカ子は別メニューで特訓を受けている。
 午後からは、下山まで自由行動にして、長髪組とは赤の他人、ココアも美味しい。ホットケーキも美味しい。
 集合時間が来て、一番下のロッヂまで皆で滑って降りる。皆、自信をつけて余裕でついてくる。楽勝!……と思った。途中までは
 私の方向音痴は有名だったが、皆信じてついてくる。途中までは
 難所があるまでは。
 中級クラス用なのだが、一歩間違えば、勢いで上級コースに流れ込んでしまう。上から見ると、かなりの急角度に見えるし、コブも出来ているが、コース地図には中級になっているので、慣れればどうって事無いコースなんだけど、皆、私の後ろで固まってしまった。
ナオ「……ひでぇ、ゼッペキやん」
ジュン「お姉さん、また道を間違えたんじゃないスか」
タカ子「無理ですぅー!!
土本「遭難させるつもりかな?」

皆「……ボソ……人殺し…………ボソ……」

「大丈夫だって!この道しかないよ!」
 私の励ましも耳に入らない。皆、板を外して歩いて降りてくる。「ボソ……人殺し……遭難……」呪文のように文句を言いながら。ロッヂについて、ロッヂの人に帰り道の確認をするまでは、雪のように白い目を向ける。雪ってきれいだ。間違っていなかったのです、この時は。
 山を降りるとき反対側に降りてしまって、車で向かえに来てもらったのは後日の話(車で40分もかかったので、どうやったらこちら側に来れるのですか?と聞かれてしまった)。
 食後、麻雀を教えてもらって、ジュンに、授業料を払う。山の朝は早いので、皆、早寝だ。
 朝からスキー日より、帰りの時間まで、めいいっぱいへとへとになるまで滑って、皆御機嫌で大阪まで……。
 で、遊びに行ってきたんでしょう、って?
 いいえ仕事です。平然と言い切る私は、ロッヂの壁にバレンタインD.C.とガーゴイルのポスターをベタベタ貼らせて貰い、バレンタインD.C.のCDをゲレンデ中に放送して貰ってきたんです。ふふ。


間違いなく遊びに行ってきたんですとも



《完》