「マニアックな世界でもサクラは咲いた  〜さくLaさく編」

さくLaさく




前回のWITHに引き続き、ZEROISMメンバーだったさくLaさくについても触れよう。
さくLaさくはレディースバンドで、全員女性だ。(ルックスと染色体は)
Gのまきちゃんは、ヴァイオリンも上手なのでよくGARGOYLEのアルバムにも参加してもらった。真紀ちゃんの妹のYUMIKOはKeybord、B.CHIZU、Dr.MIGO、Vo.TAKAKOの五人編成で、演奏力もあったし、TAKAKOの衣装なんかライヴ一回ごとに、かわいいデザインのミニの仕立おろしだ。華やかなイメージのある、ボップハードをやっていた。
ZEROISMの認知度が、かなり高かったので、当然、さくLaさくにもスカウトマン(?)が手を上げた。
それが、ゲーム会社カ○コンだ。聞けば、ゲーム会社3〜4社集まって、コンサートを開くという。ギャラも出してくれるし、条件も悪くないので、乗ることにした。
ちょうど夏休みで、セガや、その他のゲーム会社が自社のゲーム音楽のイベントを青年館で開くらしい。普通、ゲームソフト会社には音楽班があって、そういう方達がゲーム音楽を作っているのだが、ライヴをやるのにはライヴ慣れしている方が良いと考えたのだろう。
日程も、GARGOYLEのコンサートの二日後だったので、T.F、一日はoffが東京で取れるから、上野動物園にパンダを今度こそ見に行けると目論んでいた。
ところが、話が進むうちにさくLaさくが気に入って貰えたのか、その前日に両国国技館で、カ○コン独自のイベントがあって、それにも出て欲しいということになった。
「ふ〜む……、パンダよ、また次だ」
前日の仕込みで、会場を見れるということなので、
GARGOYLEのコンサートが終わった途端、後片づけもせずに、PAの谷川さんを連れて国技館に飛んだ。機材をチェックした途端、T.F.と谷川さんの顔色が変わった。PAシステムが、演奏出来るものではなかったのだ。慌てて担当者にスピーカーPA一式が必要だと訴えた。何せ、一万人入場するという。おしゃべり用のもので対応出来るものではない。
今から手配は無理だと言われたが、谷川さんの所属しているケンテックに無理を言って「夜中でっせ」徹夜でPAシステムを入れ替えた。担当が聞く。
「用意してあったスピーカーはどうしましょう?」
「え、ああ、あれはモニターに使いますから」
そんなこんなで、徹夜付きの三連ちゃんになったのだ。
しかし、両国国技館は広かった。当日、外へ出るのに迷子になりながら、あちこちにいる「チュンリー」(ストリートファイターのコスプレ)の足を見ながら歩いていると、何処にいるのか解らなくなってしまうのだ。
リハーサルも終わり、控室で、待機していると、(ほとんど横になっていた)カ○コンの担当者が足音高く走り込んでくる。「何事ですか」と聞くと「只今、社長がこちらに向かっております」と息も荒く叫んでいる。寝ぼけている私には、「只今、殿様が参られます!」と聞こえた。おもむろに起き上がって廊下を覗いてみる。(不作法なT.F.だ)
広い廊下にたくさん控室があるので、遠くの方に人の固まりが見える。一部屋ずつ回っているようだ。部屋には2〜3人が入って残り、7〜8人は廊下の外に居る。2〜3分して、出てきてまた次の部屋へを繰り返している。T.F、思わず、大病院の院長の巡回を連想した。白衣でこそ無いが、聴診器ぐらい持っているかも知れない。うへぇ。
とうとう、私たちの部屋に来た。何のことはない。付いてきている人が、私の紹介をして「よろしく」名刺交換をしたのだが、流石に大会社のワンマン社長、部屋に居たカ○コンの社員は直立不動している。庶民のT.F.には縁のない世界だ。
メンバーも私も、ゴロゴロしていてはいかんのかなと思いつつ、また寝た。うへぇ。
タイムテーブル通りに進行しているので、会場の雰囲気と客の年齢層をチェックしに行った。うへぇ、ほとんど男だ。年齢は中学生ぐらいから、大学生ぐらいで、どこからこんなにわいて出たのかと思う程、満員だ。ドイツ兵のようなコスプレを着ている人たちも居る。さすがに女装をしている人は居ないが……今まで、大半は女性客というイベントが多かったので、客の反応が、どんなものか、見当もつかない。
あまり、ライヴやコンサートに来ていそうもない客層なのだ。
「なるようになるさ」としか考えられないので、考えないことにした。
本番が始まった。「シーン……」としている。
曲と曲の間をゲーム音楽で繋いでいく構成にしていたので、様子を見てみる。
「魔界村」のイントロをヴァイオリンで真紀が奏で始めた。空気が動いた。低く、「ゥゥゥウォォオオー」
低い男声のあえぎ声がわく。「なんなんだ、こののりは……」
ゲーム曲になると、ウ〜〜〜オ〜〜〜〜と声が上る。でも段々、オリジナルにも反応しはじめた。後は、他のコンサートと同じ。やれやれ、うへぇ〜、の世界だ。
好評を博し、青年館も無事、ことなく終え、楽屋では他の会社の出演者とも顔を合わせたが、よく知ってるメタルバンドのメンバーとかも出演していて、世間せまいなぁ〜と。
その後、もっと気に入られたさくLaさくのメンバーは、カ○コンに入社。バンド名は消滅し、「××××××」というキャラクターバンドとして、ソニーからCDも出た。若干のメンバー変更はあったが、T.F.は当分、ゲームソフトには不自由しなかったそうな……。




〜 幕 〜