池田さとしを書こう。
現在ノックエムデッドで現役だがかまうものか。
ノックエムデッドは、関西圏、関東圏でも執念深いHRバンドとして……あっ、バハマにも出てもらっている。最近では、大阪のHRシーンの重鎮(?)として、幅をきかせているから、ご存知の方も多いだろう。
しかし、彼も青年時代があったのだ。
初めて接したバンドはアンジェラスだ。
ツインギターで、小川君と伊東君(この二人は女性問題でも忙しかったようだ) ベースは、WITHでもやっていた関家君(可愛かったゾ)、Vo.は金髪高音の茂村(チーヤン)だ。そして……さとし、Dr.セットがでかい。今でこそ、小さくなったが、最大のセットでは、26インチ4バス、ラック組でうちの店だと、さとしのセットを組めば、他のメンバーはステージに立てない。その頃はさすがにT.F.はさとしの顔を見れば怒りまくっていたような……。
しかし、さとしには必殺わざがあった。その頃も酒は飲んでいたが、今とは違い泣き上戸なのだ。
私に怒られた後、姿を消し、どこかで酒を飲んでくる。(私の前では飲めなかったようだ)
音高く階段を下りてきて、
「ねぇさん、聞いてくださいよ」と言いながら、大きな目から大粒の涙がポロポロあふれる。
「しまったぁ」と思いながらも、だからといって負けじと酒を煽るわけにもいかない。えんえん、泣き上戸の相手をさせられる訳だ。若い頃も声はデカい。叫びに近い声で、
「今日のねぇ、(ポロポロ)ライブのねぇ(ハラハラ)練習の時はねぇ(ボロボロ)」
色々言わんとするのだが、大声で聞こえるのは「悔しいんですよ!」ばかり。
知らない人が見ればなんと思われただろう、大男が大声で泣きながら、訴えているのである。(かんべんしてよぉ)
今から思えば、間髪をいれず、私も酒を飲んで、藤田スペシャル(酒癖が悪いらしい)で対応すれば、さとし君も今頃は酒を辞めていたかもしれない。
そんなある日、いつものように泣きながら、さとし君が、私に「くやしい」を連呼していた時、「何が?」と聞いてしまった。失敗だった。その頃アンジェラスは動員もあり次の展開を考えていたのだ。さとし君いわく「バーボンハウスに出してくださいよ!」
「いやまあ、出して貰ってあげられるけど……それより……」
さとし「バーボンハウスに出してくださいよ!」ポロポロハラハラ
T.F.「もうちょっと固めた方が……」
さとし「バーボンハウスに出してくださいよ!!」ポロポロハラハラ
T.F.「今出て、何ができる?」
さとし「自爆します!!」
T.F.「ん? うん、火薬で?」
さとし「自爆します!!」
T.F.「え?! 花火でも身体に巻いて、ラストぐらいにボーンと?」
さとし「自爆します!!!」
T.F.「すぐにブッキング切っとくわ。自爆するのネ?」
T.F.人間花火は見たことなかったので、ウキウキとバーボンに電話した。
その頃、T.F.のワガママにもめげず、みんな、優しい人たちが多かったので、アンジェラスは即効で、出演が決まった。
当日、私は、仕事でしか行かない他店へいそいそと出かけた。
プレゼンスも出して貰っていたが、勝手知ったる他の店、煙探知機や熱探知機の場所を知っていて、火薬を使うときは、あらかじめ(勝手に)切っておかないとプレゼンスの自家製作発煙筒は天井まで火が届くので、スプリンクラーとかが始動してビルごと迷惑をかけてしまうのだ。
(こんなことは禁止されているので、マネしないように)
花火だ花火だ。
ワクワクしながら待った。ウキウキしながら待った。アンジェラスは終わった。
アンコール?? ない?! 私は楽屋に駆け込んだ。
アンジェラス一同「おはようございます。ありがとうございます……e.t.c」
T.F.「さとし!!」
さとし「はい。今日はありがとうございます」
T.F.「う、うそつき!!」
さとし「は? はぁ??」
T.F.「自爆するって言ったやん!」
さとし「え? そんなんしたら死にますやん」
T.F.「うそつき!! ひど〜〜い! わーん!!」
T.F.「え? ねえさん、それ本気にしてたんですか? 死んでもいいんですか?」
T.F.「……いや、(珍しいものが見れるのなら、それもやむなし)……いや、そうじゃないと……思ってたけど……(いかん、これ以上言うと、また、酒飲んでから来られる)……自爆するって言ってたから……(それが楽しみで)どうなるのかなあと……(せめてドラムセットくらい飛び散っても)自爆するって言ってたから……(うそつき〜)」
まあでも、この頃のさとし君は可愛いものだったらしい。
アンジェラス解散後は、アリーナ、ノックエム、シュアーブリードを経て、現在はノックエムデッドだ。
現役でうちの店にも出てくれている。暇なときにも、なついてくれて相変わらず熱くて可愛い奴だ。しかし、時には酒乱になるらしい。
一年半ほど前にも、突然、電話がかかってきて……病院からだと言う。
T.F.「どうしたの? どこが悪かったの?」
さとし「いや、タクシーにひき逃げされて、足の骨が折れて……」
T.F.「ひき逃げ?! どこのタクシーかも解らへんの?」
さとし「いや、全然、僕、ちょっと飲んでましたから、記憶ないんですよ」
T.F.「ちょっと?」
さとし「ちょっと、多め」
T.F.「…………。」
ちょっと多めって、まったく、記憶がなくなる程、飲んだ時のことらしい。
やはり、そんな次の日には、精神的に落ち込むらしいが、また酒が入ると、ちょっと多めに飲んでしまうようだ。
そして、今は、私の横に座っていて(後輩の結婚式だったらしい)舌がろれろれ言っているので、かなり大目に入っているのかもしれない。
なぜなら、さとし君のことを書いていると、耳がさっきからワーンワーン言っている。今月の28日にイベントをするらしい。
「大阪METALBATTLE Vol.2」だ。
(絶対、来て下さいよ!と何度言われたか数えられない)
宣伝と引き換えにこの悪口も勘弁して貰おう。
みなさん、バナナホールです。行って上げてくださいね。酒の差し入れは、みんながきっと困るので、やめましょう。
ってなわけで……。
〜 幕 〜